紺姫神社
日吉神社境内の中段北側には紺姫神社が鎮座しております。御祭神は紺屋姫神(木花咲耶姫命としている神社も有り)とされており、紺屋、塗師屋の祖神として信仰されています。
染色業関係者の信仰対象としては、関東地方を中心として、愛染明王が有名ですが、愛染明王は本来、染色とは無関係で、愛欲や貪欲といった心の欲望を司っているのですが、「愛染」が「藍染」に音が通じる事と、愛染明王の台座になっている宝瓶を藍甕に見立てたことに因って信仰が集まったと云われています。
それ以外に染色業者の信仰を集めているとして有名なのが、佐保姫と竜田姫です。
佐保姫は春、竜田姫は秋の女神です。元は奈良県に有る佐保山、竜田山の御神霊で、古くから歌にも詠まれ、親しまれています。
佐保姫の 染めゆく野べは みどり子の 袖もあらはに 若菜つむらし
順徳天皇
佐保姫の 糸染めかくる 青柳を 吹きな乱りそ 春の山嵐
平兼盛
佐保姫の 霞の衣 ぬきをうすみ 花の錦を たちやかさねむ
後鳥羽院
竜田姫は、竜が裁つの音に通じるとして裁縫の神としても信仰されています。
嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり
能因法師
見る毎に 秋にもなる哉 竜田姫 紅葉染むとや 山もきるらん
よみ人しらず
谷川に しがらみかけよ 竜田姫 みねのもみぢに 嵐吹くなり
藤原伊家
明治の中頃に、国産の藍が外国からの人造染料におされ、姿を消し始めるまでは、多くの紺屋が存在し、現在でも町名や屋号として日本各地に残っております。
又、江戸時代にシャムに渡った事で有名な山田長政や、「慶安の変」の由井正雪は紺屋の出身であると云われています。諺にも「紺屋の白袴」、「紺屋の明後日」などがあり、人々の生活に密接していた事がうかがえます。
最近は、女性に限らず染色に関するDIY等を趣味とされる方々も多いそうですが、そういった趣味をお持ちの方は、ぜひ一度お詣りしてみては如何でしょうか。
出雲地方において、紺屋・塗師屋の祖神として信仰されている紺姫神社ですが、境内社として鎮座する神社を三社ご紹介したいと思います。
日吉神社境内の紺姫神社
來次神社
島根県雲南市木次町木次字宮前782
主祭神
大己貴命 武甕槌命 相殿 誉田別命(八幡宮)
田原神社(春日神社)
島根県松江市奥谷町122
主祭神
東殿 武御雷之男神、経津主神、天津兒屋根命、姫大神
西殿 宇迦之御魂神
須衛都久神社
島根県松江市西茶町106
主祭神
伊邪那美命 須佐之男命
*平成30年11月1日時点では、紺姫神社社殿は倒壊しておりました。
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